2022年ファッションレボリューションのトークイベント。
今回のテーマは「染め直しと歴史の可能性」
オールバーズの蓑輪さん、Watanabe’sの渡邊さん
お話をまとめていきます。
ジャパンブルーとも言われる藍色。藍染は世界各地に存在する技術ですが、日本における藍染は徳島と深い関わりを持ちます。その徳島で藍を種から育て、染めまでのプロセスを一貫して行うWatanabe’sの渡邉さん、そして渡邉さんと連携してプロダクトの染め直しサービスを開始したAllbirdsの蓑輪さんをゲストにお迎えし、藍染の魅力、染め直しの歴史、そしてこれからの染めの可能性についてお話を伺います。
https://www.fashionrevolution.org/asia/japan/
そもそも藍染めってなに?
藍染めは徳島県で盛んであった日本伝統の染め方です。
地域性、風土、政治的な後押し(蜂須賀藩)
のこともあって藍染の染料としての蒅(すくも)作りが徳島では盛んでした。
酸化と還元(染料のやり方)
「藍染め」と一言で言ってもいくつかのやり方があるそうです。
それらは全て、○○から色素を得て、■■で還元させる
と言う文言に集約できます。
※「色」を入れて、「還元」でその色を固定させるというイメージですかね🤔
合成藍(化学染料)
合成藍から色素を得て、化学薬品で還元させる
タール(石炭を燃やしたすすから「インディゴ」という色素だけ抜く)を使用
それだけでは染められないため、
化学薬品を使って色を固定させる
色素が小さいので色移りする
沈殿藍(天然藍)
植物から色素を得て、発酵で還元
水の中に藍の葉を入れて色素を抽出、それをまた発酵させて液を作る
世界中で天然藍と言えばこのやり方
暖かい国ではいつでも栽培できる、保存はできない
蒅(すくも)
植物から色素を得て、発酵で還元
日本独自の染料方法
植物を水につけて発酵させるのではなく、葉っぱ自体を発酵させる
日本は夏しか藍を栽培できない
そのため、発酵文化も相まって保存が効くよう
この方法が生まれた
藍染めは聞いたことがありましたが
こんなに方法の違いがあることは知りませんでした。
発酵を使う、と言うのもおもしろいですね☺️
藍染めとわたしたちの生活
化学染料がない時代は、草木染めをして染色していました。
けれど、そのままでは色が定着しないため
媒染剤(鉄やアルミなどの成分が入ったもの)
を使って色を固定させていたそうです。
けれど、藍染めは、酸化をしたら色が固定されるため
媒染剤がいらない。
そんなこともあり、
藍染めはその時代にとっての、大量生産に向いていました。
またその時代は、徳島の蒅が各地域それぞれの宿場町にありました。
旅人はそこで体を休めつつ
着物を新しく染め直して出発するという流れがあったそうです。
鎌田さん:
旅をしながら、各所で服を染め直しながらまた移動していくっていう習慣はおもしろいですね。
いまって服を買ったらそれ以降は自分で洗濯する以外は
なかなか服に手をかける機会ってないですが
昔は染め直す場所が宿の近くにあったりだとか
暮らしの動線の中に染め屋さんがあった。
いまもこうしたビルの中に新品を売ってるお店は多いですが、染め直し屋さんが各商業施設にあってもいいですよね。
買い物に行く、ではなく、染め直しに行く、みたいな。
染め屋さんは化学染料が入ってくるまでは文化としてありました。
なので各地域に染め屋さんがあったそうです。
藍染めが人々の生活とそんな関わりがあったとは知らなかったので
おもしろいなあって思いました。
鎌田さんが言うように、買い物新しいものを買いに行く、
という場所と
お直し屋さん染め屋さんが同じ場所にあれば、
服の循環が変わりそうだな〜って思いました。
現代の藍染めのアクション
そしてここからゲストの方の藍染めとの関わりです。
Watanabe’s
渡邊さんは徳島で藍染めの工房をされています。

人生の指針を見つけた瞬間
きっかけは、10年前に会社員をしていた時の染め物体験。
雷が落ちたかのように、これをするために生まれてきたのかもしれない!と思い会社を辞めてたそう。
そして、藍染めをしたいということで徳島に行きbuaisouを立ち上げ、
その後独立して、いまはご自身での工房をされています。
土づくりから、染色まで
現在の工房の隣には養豚場があるため
養豚場で出た糞尿を堆肥にして、土を作って、藍を育て
発酵させ、蒅にして、染めまで一貫して行っています。
藍染めは基本的に分業になっているので
藍の生産〜染めまでやっているところはとても珍しく
また、そもそも蒅(すくも)自体、手に入らないのです。
オールバーズ

5年前にサンフランシスコで立ち上がったライフスタイルブランドです。
サスティナブルなスニーカーで有名です。
ミッション
Bettrer things in a better way
より良いことを、より良い方法で
パーパス
ビジネスの力で、気候変動を逆転させる
会社の哲学として、
サステナビリティが真ん中にあるオールバーズ。
新しい商品を出す時にも、
「これぐらいのカーボンフットプリントがある」と
デザインや値段と同じように「サスティナビリティ」が
話しの中心にあるそうです。
協業のきっかけ

現在オールバーズとWatanabe’sのコラボ企画で
Watanabe’sで染められたスニーカーの販売や
スニーカーの染め直しサービス
藍染め体験を行っています。
なぜ、そのコラボが生まれたのでしょうか。
オールバーズは、ニュージラン人とアメリカ人の方々で創業、
そしてスニーカーの生産地は中国、韓国で国産のものはないため
何かできないか・・・と考えた結果、
藍染めのジャパンブルーがいいのではないか!と。
オールバーズの靴は洗濯ができるけれど、汚れが落ちないものもある。
長く使ってもらうためには染めがいいのでは、という思いから
はじまったようです。
染め直しの可能性をさぐる
色落ちってポジティブなのかもしれない
鎌田さん:
いまは「色が落ちるの」がネガティブな要素を持っている。
でも実は「色が落ちる」って
色を染め直して関わり続けるチャンスがあるってこと。
その洋服との関係性がより深められることかもしれない。
たしかに、そうですよね。
こうした、鎌田さんの視点がとてもいいなと思いました。
ネガティブなことも、実は関係性を深められるチャンスかもしれない。
そう思ったら、色落ちも良いことかもしれないですね☺️
非効率性とビジネス
蓑輪さん:
蒅の生産の非効率性がちゃんとビジネスにならなければならない。
鎌田さん:
いま徳島でも、年間を通して栽培できるようにしよう、水耕栽培でやっていこう、化学肥料を使っていこう
というような革新的な動きもある。
一方で、伝統的な部分とか昔ながらのやり方も残って欲しいですね。
その効率を求める部分と伝統的なところを残す部分の両立ってどうバランスとっているのでしょう。
渡邊さん:
「第一次加工まで目が向いていないから難しいなと感じている。
SDGs、サスティナビリティと言われている。
第二次、第三次加工には目がいきやすい。
」
「自然に向き合っていると、自然から享受されているという感覚になる
この色をどうやって使わせてもらおうかなっていう視点になる。」
鎌田さん:
いま「服の種」という企画をしているけれど、自分でコットンを育てて、紡績工場に持っていって、服にする、と言う工程を知ると
ファッションと農業って密接に関わっているんだなと感じる。
そういう自分で体験する、ということが何かのヒントになるかもしれませんね。
蓑輪さんから非効率性とビジネスの難しさ、と言うキーワードが出てきたのは興味深かったです。
どんなにいいこと、環境負荷の小さいことや、伝統を繋いでいくことであっても、その取り組み自体が資金的に続かなければ、続けることはできませんからね。
それを続けていくためにも、個人がまずは自分自身で関わってみる、という体験が必要なのかもしれません。
オールバーズ×マイファーム
また、オールバーズでは、ひまわりの種を配るといった取り組みもされているそうです。
オールバーズの素材であるウール。
ウールはメタンを排泄してしまいます。
その羊が食べる草、その草育む土を豊かにしていきたいという考えから
植物を植えたらいいのではないか。
そして光合成が一番起こる花はひまわり、と言うことではじまった企画。
育てていくうちに環境問題にも意識してもらえたら、とのことです。
まとめ
わたし自身、もともとBuaisouyやオールバーズは知っていたのですが
その後独立された、watanabe’sの取り組みや協業秘話については初めて聞いたので関わりを知れて面白かったです。
また藍染めと、わたしたちの暮らしがそんなに近いところにあったのだなと勉強になりました。
Watatabe’s


オールバーズ

